志願者日本一の近畿大学

2017年1月5日(木)新年明けましておめでとうございます。

1月3日の新聞に1ページを使った近畿大学の広告が出ていました。それは、旧来の

「偏差値」での大学選びを越え、世界大学ランキングにランクインし、国際的な評価を得た大学、世界的に通用する大学として発信していました。

近畿大学(近大)は3年連続日本一の志願者を集めており、この少子化の時代にどうして近大は志願者を増やすことができたのか。「なぜ関西ローカル大学近大が志願者数日本一になったのか」(著者:山下柚実)を読んでみました。その取組みについて

(1)女子志願者と新たな志願者の増加

昔、近大はバンカラの大学という、あまりよくないイメージがあったが、少子化の時代をむかえ、「女子の比率を高めること」その実現にむけて、キャンパスの整備(女子トイレにおしゃれなパウダールーム、広さは男子トイレの倍)に取組み「キャンパスがきれい」で関西1位を獲得した。また、女子に人気のある学部(総合社会学部・建築学部)を新設した。その結果、全体として女子の比率が3割を超え、「女子を受け入れたい」という目標を実現していった。こうして志願者のエリアも全国に拡大し、「関西ローカルから全国区への大学」になりつつある。

(2)「近大マグロ」を代表する研究成果を世界に発信し、近大ブランドの能力の高さを社会に浸透させていった。

大阪のJR大阪駅に隣接するグランフロント大阪と東京銀座にある「近畿大学水産研究所」は、養殖の「近大マグロ」を食することができる、大学が経営するお店です。いつもお客で長蛇の列となっている人気店です。この「近大マグロ」の研究は、他の研究機関が撤退するなか、諦めずに研究を続け、マグロの養殖技術において、世界で初めて完全養殖を近大が成し遂げた。「近大マグロ」の養殖成功は、近大が掲げてきた「実学教育」の1つの頂点となり、「偏差値」という枠組を越えた近大ブランドを確立させた。

(3)文系学部の「弱点」を分析し、「強み」に転化

近大は理系学部が充実しており、実学の道を充実させてきた。反面、文系の分野、特に国際教育への対応の遅れが、近大の評価を下げていた。近大は、自分たちの「弱点」を見つめ、分析し、力を注いでいった。そして、その「弱点」をどうすれば「強み」に転化できるのか模索し、正面から向き合った。まず、民間教育機関ベルリッツと連携し、2016年4月に国際学部を新設した。国際化への実学教育に対応することを第一に、1年生後期から全員が留学するという、異例な教育を掲げ、」他大学と差別化を図ったことにより、志願者を増やしていった。

(4)「100%ネット出願」

近大は全国で初めて「100%ネット出願」を実行した。伝統校は、前例を守る傾向が強く、なかなか変わることができないなか、近大は大学淘汰の時代を生き残っていくために、改革派として他大学がやるまえに「完全ネット出願」を達成していく道を選択した。そして、受験生に一番アピールする有効な方法として「エコ出願」(受験料の割引)に到った。完全ネット化は経費削減効果をあげ、結果的に9,000人の志願者を増やした。

(5)戦略的情報発信(宣伝・広告・広報)

近大の広報は「選択と集中」に取り組んできた結果である。近大の広告を出稿するにあたって3つの基本がある。

①少々大学界の常識を逸脱しても目立つ広告を出す

②大学名を隠しても近大の広告とわかるような広告にする

③クリエィティブを代理店に丸投げしない

受験生に情報を届けることや、伝わった情報が大学の新しいイメージ作りに寄与している。そこで、大学のイメージを変えるためには、何が必要なのか。

①ポスター制作や新聞広告といった宣伝によるイメージ作りで、近大のイメージを一新していく取組みに成功した。

②プレスリリースや「近大コメンテータガイドブック」の作成は、近大のブランドイメージ作りを推進し、大学選びのブランドイメージのアップに貢献している。

 

 近大の場合「近大マグロ」からの発信力、企画力、発想力の戦略を使い、教員・職員が自分たちの「近大」を日本一の大学にしようという気持ちへと突き進んでいる。他大学とは次元の違う取組みを実践していると感じられる。

 少子化の時代をむかえ、大学は本当に社会に出て役立つ「実学教育」を実践する大学と、専門性・研究という学問に特化した大学に2分されていくのだろうか。このような時代こそ、リーダーが鳥の目・魚の目を持ち、将来を見据えた目標と実行力を発揮して、教職員(車の両輪といわれるが?)一丸となって改革できる大学が生き残るのだろう。